ONE ON ONE

Performed by Daryl Hall & John Oates


〜One on one, I wanna play that game tonight〜
・・・今夜は、一対一でゲームしたい・・・

included ”H2O” album
words & music by Daryl Hall

  <CAST>

ロック:塩沢兼人
ビート:森功至
バーディ:麻上洋子
ブルース:曽我部和恭

サラ:小山茉美(←オリキャラのため、希望(^^;)
ヘルムート:若本規夫

ナレーション:安原義人



≪ナレーション≫
さてさて、ここはJ9ランドのカジノの一画。
いつものように宇宙バイクに乗った女が一人、カーメン・カーメンのゲートをくぐり、いつものようにナンパされながらも、いつものようにウィンクでかわして、いつもの場所に現れた。
彼女は先日、太陽系の50惑星を回って、見事1年間でここに戻ってきたJJ9チームの紅一点、気まぐれバーディ。


すでにロックとビートが入り口の扉にもたれて、彼女の到着を待っていた。
おとぼけビートが赤い帽子のつばを人差し指でツンと押し上げて口を尖らせる。
「遅いじゃない?」
「メンゴメンゴ(^^;)・・・で、もう始まってんの?」
「フッ、とっくにね。なかなか相手も手強そうだ。」
抜き打ちロックが左手の親指でドアの中を指差した。ドアにもたれて、ハーモニカを吹き始める。

「そう・・・。でも、ブルースのことだから、今度もあっという間ね、きっと。」
「それが、もう1時間も前に始まったきりでさあ。どういうのかね?あれ。」
ビートが帽子を右手に持って、パタパタとあおぎながら、あきれて口笛を鳴らした。
「ええ!?1時間も???いつものようにみんなでホイッ、で終わりにしちゃえばいいじゃないの。」
「ところが今回はブルースのご希望で『今夜は一対一でゲームしたい』だとさ。」
「じゃあ、相手も一人なのね。それで1時間もかかってるの?」
「そーゆーこと。」
「あっきれ(呆れ)たー!手(カード)がないわけじゃないんでしょ?」

ハーモニカの音が止んで、その口が開く。
「それがね、お互い牽制しあったまんま、ああやって1時間・・・なわけ。相手の女もよくもつね。」
「あら、どこの物好き?ブルースと一対一でゲームしようなんて!?」
「ん、よくわからないんだけど、どうやらブルースとは初めて会ったんじゃあなさそうだったな。」
「ふーん。名前とかは?」
「えっと、サラ・・・だったかな?」
「知らない名前ね。あたし達と出会う前に付き合いのあった女性かしら。」
「ま、そんなとこでしょ。」

ビートがドアを開けようとして、取っ手に手をかけた。
「やめときな、ヤボだぜ。」
ロックが右手でノブからビートの手のひらを払った。
「今夜、決着付けたいんじゃないかな。」
ビートがちょっと心配そうに眉をかしげた。

「ふふ♪そうね。なりゆき、見させていただこうじゃないの!」


ドアの中のことは、ロック、ビート、バーディは知らない。
ただ、ブルースとサラの時間が流れていた。


「さてと。そろそろ決着着けたいところだが・・・。」
ゲームが始まって1時間、ようやく男の口が開いた。彼は、JJ9チームのリーダーで、I・Cの頭脳を持つ男、ブルース・カール・バーンスタイン。
太陽系最大の影の組織「ブラディ・シンジケート」とドデカイ勝負をして、見事勝利した男。彼の元には1200億ボウルという大金が入ってきていた。
そして、向かいに座っているのが先ほど名前の出たサラという、25歳くらいのブロンドの女性。左手の中指と人差し指の間に煙草をはさみ、煙を燻らせていた。彼の1時間ぶりの言葉に、足を組み直して座った。

「あら、いいのね?」
「ああ。」
「じゃあ、行くわよ。あなたの手は、大体わかっているわ。」
サラがカードをテーブルに置こうとすると、
「フッ、そうかな。もう昔の私ではないよ。・・・貴女に心を読まれたりしない。」
サングラスの向こうから見えた2つの瞳は、かつてサラが見た輝きよりも、沼のように抜け出せない深みがあった。

サングラスを外したブルースがサラを見つめたまま、扇子開きに一気にカードをテーブルに裏返した。
「ストレート」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「あら。」
タバコを口に咥えて、1枚ずつカードを並べる赤いマニキュアの右手・・・。
スペードのエース、ジャック、クイーン、キング。
最後の1枚になると、タバコをまた左手の中指と人差し指にはさんだ。
「見なくても、わかってるわね、きっと。」
「ジョーカー。」
「あたり。」

「今日は、帰るわ。」
と、サラは灰皿に吸っていたタバコを押し付け、煙を消した。ヒールを履き直して、ソファにかけていたコートを取ろうとした。
「待って。」
ブルースが立ち上がって、彼女が立ち上がるのを制した。
「ふふ、リベンジ?」
紅い口紅が微笑む。
「いや、ワインを1杯ご馳走したい。もう少し、そこに座っていてくれないか。」
「・・・いいわ。」


ブルースが椅子から立ち上がる音に気づいたドアの外の3人。

「おんやぁ〜?終わったのかな。」
ビートが中に入ろうとすると、またロックがドアの取っ手に触ったその手をはらった。
「まあまあ、もう少し、様子見ようじゃないの。」
「そうね。今夜は一対一でっていうお望みですもの。もう少し。」
「んー、お楽しみはこれからなのかな、妬けるねぇ〜。」
「そうでもないんじゃない?」


外の3人がやり取りしている間に、ブルースがワイングラスを2つ左手で、右手でワインの瓶を持ってサラの前に戻ってきた。
「私も少しは進歩しただろう?」
「ふふ、そうね。I・Cの頭脳を持つ男・・・か。」
「君の前だと、機械も役に立たないようだ。」
と、ワイングラスを並べて、サラのグラスに紅ワインを注ぐ。

『トポトポトポ・・・』

「どうぞ。」
「ありがとう。あら、お酒はダメなんじゃなかったっけ?」
ブルースは自分が座っていたソファに座り、グラスにワインを注ぎながら、
「ま、そのあたりは私も大人になったんだよ。」

「あら、そう。じゃ、もう一杯いただこうかしら。」
と、サラはすうーっとグラスの紅い液体を飲み干した。
「いや、やめておこう。あなたがこれ以上飲んだら、また心を読まれてしまいそうだ。」
「ふふ、そうね。そうするわ。」
「私が飲み終わるまで、そこに座っていてくれるだけでいい・・・。」

「ヘルムートは元気?」
ワインを飲んでしまったサラは、新しいタバコを取り出して口に咥え、少し古びたZIPPOで火を点けると、深く息を吸い込み、一呼吸置いてから煙を吐いた。
「ああ、元気だったよ。この間久しぶりにキャンプに行ってきた。」
「相変わらず、そういうことやっているのね。やっぱり今もあなたにそっくり?」
一口ワインを口に含ませ、少し考えて、ブルースが答える。
「もちろん、見た目はね。でも、私も彼もあの頃とは変わったよ。」
「そのようね。見てたわ。ブラディ・ゴッドとの勝負。あざやかだったわね。」
「・・・ありがとう。」

ブルースが、最後の一口のワインを飲み干した。ゆっくりと・・・。
「今日は、楽しかったわ。」
サラは吸っていたタバコを灰皿に押し付けた。煙が一筋、天井に向かって伸びる。
グラスを置いたブルースの手が、サングラスをもう一度かけようとした。
「またいつか、お相手願えるかな。」
「ふふ、喜んで。」

今度こそ、上着を持って立ち上がろうとするサラの前に、ブルースが立ちはだかった。
その目は、2年前のあの時と同じにじっとサラの瞳を見詰めていた。
男の視線から目を逸らしたサラは、
「今日はありがとう・・・。また来るわ。」
と、ブルースの右側をすっと通り抜け、出口のドアの前に立って、右手でドアノブを握った。
「ヘルムートによろしくね。」
「ああ、君も元気で。」
ブルースは彼女の姿を見ずに、見送った。


ドアの外の3人が、ドアの取っ手が回るのに気づいて大慌てで散らばる!
「やっば〜〜〜〜。はやくはやく!」


ドアの中から出てくるサラを、3人は隣の客車の中から見た。
「ん〜、暗くてよく見えないわね。・・・あら?」
「どーしたの、バーディ?」
「あれ、サンディ・ブラウンじゃない?」
「誰、それ?」
「ビートはご存知ない?映画女優よ。母親のバースデイ・パーティに来てたことがあるわ。」
「へえ、彼女がねぇ。」
「なんだ、ビートさんは彼女のこと知ってたんだ(笑)」
「いや、言われるまでわからなかったよ。それほどたくさん出演作があるわけじゃなさそうだし。」
「そうね、これといって代表作があるわけではないわね。」

「でもさ、なんで女優さんがブルースと賭け事なんかしてるわけ?」
「さあ・・・。」
「ご本人に聞いてみようじゃないの!締め出されてた俺たちとしちゃ、知りたいね。」

と、客車を出た3人は、また先ほどのドアの前に立った。


ドアを開けると、ブルースがソファに座ったまま、テーブルの上に置かれた、カードではない何かをじっと見詰めていた。
ロックのハーモニカの音に気づき、ブルースが3人を見た。
ハーモニカを吹くのを止めたロックがたずねた。
「ヘイ!ブルース。今日のゲームはどうだった?」
3人がテーブルの上を見ると、ブルースが見つめていたのは写真だった。

「ああ、私の負けだ。」
「ええ?ブルースでも負けることがあるの!」
ビートが驚きの口笛を吹いた。
「I・Cの頭脳を持つ男としては、何か理由がありそうよね。」
写真を懐にしまいながら、ブルースが言った。
「理由なんかないさ。ただ、賭けをして、負けた。それだけのことさ。」
「機械では測りきれないなにかがあった、ってことか。彼女が女だから?」
「彼女が私に賭け事を教えてくれたんだ。敵いっこないよ。」
 

I・Cの頭脳を持つ男が、唯一、人間に戻った瞬間だった。
3人は、1杯のワインで少し酔ったブルースを見つめていた。


彼女は、サンディ・サラ・ブラウン。ブルースとは同い年で、ブルースの兄ヘルムートの恋人だった。
駆け出しの女優と、ゲリラに身を投じる男、どちらともなく惹かれ合い、それぞれの部屋に行き来するようになった。
当然男の部屋には弟のブルースもいた。歯ブラシ一本持ってやってくる彼女は、賭け事、特にカードで設けて生活しているような女だったから、ブルースもよく相手をさせられた。そして、いつも彼女には勝つことができなかった。

「またか。サラにはかなわないな。」
「よっし!もう一回どお?」

サラは彼女の愛称。家族や親しい人間がこう呼ぶ。
カードを切りながら、火をつけていないままのタバコを咥えたままの赤い唇が、いたずらっぽく笑う。

「やめとくよ。いくら何も賭けてなくたって、こっちの心がもたない。」
「あら、そう。じゃ、帰ろうかな。ヘルムートによろしくね。今度はいつ帰るか聞いてる?」
「いや、何も。長くなりそうだとは言ってたけど。」
「そう・・・。ま、帰ってきたら電話するように言っておいてね。」
「コーヒー、飲んでいく?」

そう言って、カードを置き、サラはタバコに火をつけて一服した。
コーヒー豆を挽く音が響く。

声を少し大きめにして、サラが言う。
「相変わらず、アルコールはダメなのね。」
「いや、サラと一緒には飲まないことに決めているんだ。」
「?」
「ま、ドリップに少し時間が要るから、ゆっくりして行ってよ。」

コーヒーメーカーに水を入れて、ブルースが戻ってきた。
サラは、短くなったタバコを灰皿に置いて、ジジっと火を消した。

「ね、前から聞こうと思っていたけど、バーンスタイン家ってば名門じゃない。なぜヘルムートはあんなことしているの?」
「さあ・・・彼のことは彼にしかわからない。今まで彼とそういう話はしたことなかったのかい?」
「まあね。お互いあまり干渉しないようにしてきたから。」
「じゃあ、なぜ僕に聞く?」
少し考えて、サラの口から出た言葉。
「そうね、なぜかしら・・・。」

コーヒーメーカーから、湯が落ちる音がジョボジョボと聞こえてきた。
空白の時間と空間を支配する音。
いつからヘルムートと会っていないか・・・7ヶ月前の彼の誕生日を3人で祝って以来・・・。
そんなことを二人とも考えていた。



7ヶ月前。
ブルースが食事の用意、サラがワインを選び、ヘルムートが戻ってくるのを待っていた。
「あら、ケーキは?」
「そんな歳でもないだろう。」
「何言ってるの!バースデイパーティにケーキがなくてどうするのー。材料はある?」
「さあ、小麦粉とバターとタマゴと・・・。」
と、ブルースが冷蔵庫を探し始めた。生クリームはなさそうだった。
「仕方ないわね。ケーキは買ってきたほうが良さそうね。ちょっと行ってくるわ♪」
「結局作る気なんてなかったくせに。」
サイフを片手にドアを出て、振り返ったサラがアッカンベーをした。

できあがった料理を皿に盛って並べていると、部屋のドアが開いた。
「まったく。人の部屋でまた料理なんか作って。」
ブルースと顔がうりふたつで、髪の毛の色がブラウンのブルースの双子の兄、ヘルムートが帰って来た。
「だって、バーンスタインの家で自分で料理なんか作れるわけないじゃないか。」

「フン、ま、かまわないが。」
「お帰り。兄さんがいなくても、僕が出入りしているからアパートの大家さんも黙認してくれているんだからね。」
「何言ってるんだ、ずっと別荘にしていたんだろう。」
「ははっ、バレたか(^^;)」
靴を脱いで、リュックサックを背中から下ろしたヘルムートは、いつも自分が座る席に座った。

灰皿に短くなったタバコが2本。
「サラが来ていたのか?」
「ん?ああ、今ケーキを買いにいっているよ。このトシになってケーキもなかろうに(笑)」
「ケーキ?・・・ああ、今日は誕生日だったな。」
「まったく、サラもサラだけど、兄さんはもう誕生日なんてどうでもいいんだな。」

流し台にあるコップに、ブルーの歯ブラシが1本。ヘルムートのではない。
「今、ここに住んでいるのか?」
「ああ、前はいちいち家に帰っていたけど、なんだかここが落ち着くんだ。もちろん、全部自分でしなくちゃならないけれどね。」
「サラが時々来ていただろう。」
「ん・・・時々ね。」


本当は、週末は必ず顔を見せて徹夜で朝までカード、それ以外の日にもカードの相手をさせられていたのだ。
もちろん、それはサラが毎日ヘルムートが帰ってきていないかを知るためだったと、ブルースは感じていた。
そして、同じ顔の自分を見ていることで、寂しさを紛らわせていることも・・・。


ヘルムートは、灰皿に残った口紅が薄くついたタバコの吸殻を見つめていた。
自分もタバコを探してみたが、胸のポケットのタバコの箱には1本しか残っていなかった。
最後の一本を口に咥えて、マッチがないことに気づいた。ライターはとっくに使い果たしてしまっていた。
火をつけられないまま、ヘルムートはそれを灰皿に押し付けた。

ここに戻ってくるのは5ヶ月ぶりのことだった。

5ヶ月前、ここを離れる間際にサラにはここには自由に出入りしていい、と伝えて合鍵を渡しておいた。もちろんブルースにも。
いつ戻るか分からない身だったが、やはり帰る場所は欲しい。
戦いに疲れて帰ってきたとき、特に歓迎して欲しいとか、出迎えて欲しいとか、そういう気持ちはなかった。
ゲリラに身を投じる覚悟をして以来、死は覚悟していたが、できれば死にたくはなかったし、帰る場所だけは欲しかった。
それが生まれ育ったバーンスタインの家ではなく、この小さなアパートの、サラとブルースと3人で過ごした場所であるのは自分でも不思議だったが、自分の居場所はここで、自分が座る場所もここだ、とずっと思ってきた。

別にブルースがここに住んでいようが、そこにサラが来ていようが、構わない。
今でもここが自分の居場所であるかどうかを確かめたかった。
そのためにキャンプを抜け出して帰ってきてしまったのかもしれない。

部屋の中を見渡してみた。
特に変わった様子はない。
留守にする前も、いつもブルースが来て料理をしていたし、サラが来るたびに赤いバラを一輪、白くて細い花瓶に生けて行くのも同じ。
それを確認して、ヘルムートはようやく一息ついた。


「兄さん、料理ができたからお皿を持って行ってよ。」
ブルースが洗い物をしながら振り返らずに言ったが、返事がない。
最後にフライパンを洗い終えて振り返ると、ヘルムートは椅子に腰掛けて背もたれに首をのせて、顔を上に向けたまま眠っていた。
灰皿に乗せたままのタバコの灰は、まだ短かく、紫煙がすうっと天井に向かってのぼっていた。



 
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